天気の良い日が続くようになると、住宅街を始め、中心街でも若いお母さんたちが散歩やら買い物やらで、赤ん坊を乗せたバギー(乳母車)を押して歩くようになる。
おんぶや抱っこで外出することはほとんどないスロヴァキアでは、バギーの普及率は高い。しかし、バギーの値段が安いかというとそうでもなく、大きさも機能もごく平均的なもので4000〜5000コルナはする。それにもかかわらず、多くの人が首の座っていない赤ん坊を横に寝かせられるタイプのものを持っていて、赤ん坊が随分小さいうちからよく散歩に連れ出す。
さて、車を持っていない、あるいは自動車免許のない赤ん坊を連れた母親が頻繁に使う交通手段が、公共の乗り物、つまりバス、トロリーバス、電車である。むしろ、母親が車を所有しているケースのほうが珍しいから、大抵の人は公共の交通手段に頼っていると言ってよいだろう。
バギーを引く母たちがこういった乗り物を乗り降りする時には、もちろん一人では無理である。そこで、周りの人に協力を求める。この間、私がバスに乗っていた時などは、バスに乗車する人の中にバギーを引いた母親がいたが、そのバス停には他に男手がなかった。すると、バスに乗っていた一人の若者がバスを降りてバギーを乗せるのを手伝ったのである。このように、時には周りの人の方が率先して手伝う場合もある。
また、大きい都市を走る各乗り物にはバギー用のスペースが設けられているため、母たちも赤ん坊と一緒に安心して外出できる。
概して、スロヴァキアではちょっとした場面でも頻繁にコミュニケーションが交わされる。お店、エレベーターの出入りの時はもちろん、役所や病院の待合所においても「こんにちは / Dobrý(ドブリー) deň(ディェン)」「さようなら/ Dovidenia(ドヴィディェニア)」の挨拶をする。バギーを運ぶ時などの「お手伝いしましょうか / Pomôžem(ポムォジェン) Vám(ヴァーン)?」という言葉もよく掛けられる。
その他にも、バスなどで降車したい人が降車し切らない内にドアが閉まってしまった場合など、他の乗客が運転手に向かって「まだ降りる人がいます!」と声を出す。お年寄りで足の不自由な人、重い荷物を持っている人などは、自ら助けを求め、助けを求められた人は快く手を貸す。また、子供も幼い頃からこういった様子を見ているから、大きくなるに連れて、ごく自然にこのような行為が出来るようになるのである。
もし、スロヴァキアの魅力を尋ねられたら、私の答えはやはり一番は民族舞踊になるが、二番目には、この声の掛け合い、助け合いを挙げるだろう。こういった声の掛け合い、助け合いは、どこの国よりもスロヴァキアが誇るべき点であることは間違いない。
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